ゆれる

長めに喋る事〜!

狭き門より入れ

 

おはようございます。

予告していた通りに「狭き門」を読了しましたので感想を…!

 

本当に凄く面白かった…。やっぱり私が心踊るのは昔の人の作品です。狭き門は超絶プラトニックで精神の恋愛のお話でした。いやもうプラトニックとかこえている。

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私がこの本を偶然にもどこかの本屋のワゴンセールで100円とかで購入したので、昭和52年発行の第22版でものすんごいレトロなんですけど、それも嬉しい思い出になりました。当時の定価では200円と書いてあり物価の違いを感じました。

 

ここから感想と私的にグッときたポイントを書いてます…あまりに有名な話だかあらすじはご存知の方も多いかと思います。あくまで私の陳腐な感想なのであまり深く考えず書いてます、考察ではありませんのでご了承ください✩

 

ジェロームとアリサといういとこ同士の恋なのですが、お互いがお互いを愛しながらも勘違いと積み上がる理想化によって最後まですれ違い結ばれることはなかったという感じ。最後にアリサの日記が入っていて、それまでは本当にアリサの真意がわからずジェロームと共にやきもきしながら読み進めました。

 

ジェロームは熱烈に愛してるし、アリサもそれをまぁまぁ受け入れ姿勢なのに結局煮え切らない。アリサはジェロームの相手には自分よりも妹ジュリエットの方が相応しいのでは?と思って遠慮してしまったり。

 2人は元々お家が金持ちだからずっと高尚な遊びと趣味を持っていて、幼少から文学と詩、お花や音楽を愛して生きていました。そして信仰もめちゃめちゃ厚い。ジェロームくんがまだショタみの残る頃にアリサに求婚してますが断られます。アリサは「結婚」てことに超絶敏感なのでこれからも何度となく結婚の話する度に拒絶されてしまいます。それでもアリサが好きだし、アリサ以外考えられないし、今は断られたけど親たちも自分らが結婚するって思ってるだろうしアリサも自分のこと嫌ってないのはわかるからジェロームはいつかは結婚できると信じてます。

 

ジェロームが離れたパリの学校に行っても、2人はそれぞれ文学を嗜み、神に祈りを捧げることで神様の元で一緒になれるんだ!という感覚でいます。ジェロームは元々勉強大好きで、更にMなのか、アリサのために、脇目も振らず勉強と信教に徹し、己の欲を律する努力をする。そしてその努力をアリサには言わないでおく事を快感に思える。凄まじい陶酔…!Mというよりは自己陶酔ナルシスト系かな。はんぱないけどちょっとわかる気もする。やっといた事を敢えて言わないのってかっこいい感じするもん。職場では、仕事はそれじゃ評価されない、自分でやったことは証跡に残せって言われてしょんぼりしましたけど。

ジェロームはちょっと熱心すぎるけどこの行為は可愛いと思う。自己満足のためを超えて相手に見返りを求めたらだめですけどね!ただ、ジェロームがそうやってアリサの理想の女神像ハードルを上げに上げ、アリサもそれに応えようとするばかりに苦しみうまくいかなくなる。

ジェローム君の自己陶酔が素晴らしい文を作中から引用します。

 

ーー勤勉、努力、敬虔な行為を神秘的なまでに、すべてアリサに捧げ、彼女のためにのみやったことを、しばしば彼女には知らせないでおくことに、徳の洗煉を見いだしていた。こうして、私は一種の陶酔的な謙譲さに酔い、ああ!哀れにも、自分の喜びはほとんど顧みないで、幾分かの努力に値するものでないかぎり、なにごとにも満足しない習慣になってしまったのである。ーー

 

ほんとこの文大好き…最高。

 

この辺では会えてないので2人はずっと文通でお互いの愛をぶつけ合います。

会えないからこそいいのかアリサも手紙ではかなり熱烈。

 

あと、ジェロームがアリサの弟(末っ子)と同じ学校で、しばしば親切にしてやってた、アリサの弟じゃなかったらそこまでよくしてはなかっただろう、って書いててホントに正直で面白い。

 

会いたい会いたい文通を続けてようやく待望のジェロームの帰省!わくわくしながら帰ったら帰ったで、親類のおばさんやらがお節介で2人っきりにしてくれるんですが、シャイで敬虔2人はその余計な気遣いがめちゃめちゃ嫌で嫌で…つらい……なんでこんな居心地悪い思いをしないといけないんだ……理想の再開はこんなはずではなかった…と思ってしまう…面白すぎる。

 

アリサは、やっぱり私たちは会わない方がいいのです!!!この間酷い目にあって思い知りました!ただ勘違いしないでくださいね、あなたの事はとっても愛してます。この想いを疑ったりしないでくださいねと手紙。ほんと手紙の内容も熱の度合いの変化が激しくて、アリサ!君って人は!!!何が気に入らないんだ!って読んでて普通に思いました。情緒不安定気味です。

 

アリサが提示してた結婚できない理由が全部なくなってもやっぱり拒絶する。

手紙を書かない期間を経て、アリサから指定された期間ジェロームは家に戻るのですが、そこで会ったアリサが前のアリサではなくなっていてジェロームは絶望します。私本当にここのシーンがもう大好きで………。ア〜〜〜〜!!!アリサ…!なんてこったい…この仕打ち…最高かよ…。

2人は文学を愛していて、アリサの本棚はジェロームから贈られた本と、2人で一緒に読んだ本を並べてちょっとずつ作り上げてきた愛の軌跡でもあります。ここで既に私的にマジで最高なんですけど、その愛の本棚が「くだらない通俗信仰の書」に置き換えられている。これはとんでもない事です。ジェロームはショックが止まらない……ここに来てのアリサの突然の裏切り…!

 

こんな、小説読んでて体がよじれるような快感そうそうないんですけど、最高最高てずっとドキソワしながら読んでました。アリサの日記を読んだり、このシーンの前置きを読むとここの裏切りが作為的なものだとわかるんですけど、アリサも痛切な思いでこれを敢行したんだなぁと切ない。

 

そしてまたアリサのお父さんが亡くなった後にジェロームは家を訪ねるんですけどその来訪を伝えてなかったし庭から入ったのにアリサはジェロームが来た事を察知してて、そんなんもう嬉しいじゃないですか、感動しながらそれを出さないようにするジェロームも可愛い。そこにですよ、アリサは2人の思い出の紫水晶の十字架を差し出して、ジェロームが結婚して娘が出来たら渡して欲しいって言うんです!!!誰が!誰と!結婚すんねん!!!でしょ?!ジェロームも「アリサ!僕がいったいだれと結婚するというのだ?きみだけしか愛さないことは、きみも知っているのに…」と…。そりゃそうやん…。

 

その後はアリサは亡くなり、妹ジュリエットから訃報の手紙とアリサの日記が送られてくる。アリサの日記部分が続き、アリサもこういう気持ちで苦しみながら過ごしててんなぁと納得し、最後にアリサの死から10年後にジュリエットと再会する流れですけど、最後の終わり方がとても素晴らしい…尾をひく結び方です。

 

やっぱりお互いの飽くなき理想化、上がり続けるハードルとすれ違いがたまらないです。久しぶりに本当に面白いと思える本でした…。

いろんな訳者の訳があるのでいつか他の人のも読んでみたいなと思います。でも今回偶然ですけど中村真一郎さんという方の訳で読めてとても良かった〜〜!

 

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カバーを取ってもレトロさにあふれてる。

父母の熊本旅行土産、熊本城の黄金の栞で読みましたʚ♡ɞ

 

以上!o(`ω´ )o