ゆれる

長めに喋る事〜!

ままならないこと

 

本を読むのが好き過ぎる。

 

わたしの中では本(小説)は【ストーリーが面白い部門】と【文章が美しい部門】に分かれている。ただそのまんま大衆文学なのか純文学なのかというだけだけども、あまりそういうふうに呼びたくなくてなんとなくふんわりと頭の中で分けている。どっちがどうと言うよりどっちも好き。

そういう分類があるのがもうすでに嬉しい。寝食忘れストーリーに没頭したい気持ちのときと、美しくも難しい文章群を何往復もたゆたっていたい気持ちのときそれぞれにぴったりな本があることの幸せ。選べる幸せ。

 

近頃は前者のストーリーが面白い部門の本(SF小説)を続けて読んでいたので久しぶりに後者を読むとすごい。前者を読んでいるときとは異なる幸福感に満たされる。一文を消化するために必要なエネルギーがかなり多い。全然進めない。ようやく短編をひとつ読み終わってもまた最初から読み始めている。美しく難解な文章を行きつ戻りつし続けることの幸福感は比類ない。

 

本を読むのが好きとか純文学が好きとか、人に伝えるときは分かりやすくそのように言うが別に研究しているわけではなく、読むことを楽しんでいるだけなので言ってしまえば別に内容を理解しきれていなくてもいい。著者の思惑や複雑な例えに何ひとつ気付けなくてもいい。目で文章を追って飲み込んで心地よければそれでいい。

そういう感じで、行きつ戻りつ、読み終える前にまた初めから、読み終えてからもまた初めから、を何度もやるわけで、当然一冊を読み終えるのにかなり時間がかかる。なんなら文章が良すぎて読み終わる前に最初に戻るを繰り返しすぎて結局読み終えてない本もある。日常の煩雑ないらんことに邪魔されずにまるっと全部満足するまで往復しながら読み切りたいという謎の欲が生まれてしまい、雑事に中断されるのがもったいなくて長期間の休みがなければ決行する気にならず未読のままになっている。コスパが良いどころの話ではない。

 

私が謎なのが、読書好きの人はなぜかだいたい本を読むのがはやいということ。よく言うじゃないですか、今年の芥川賞受賞作はどうだったみたいな、毎年あるのをちゃんとそのシーズン中にしっかりと読んでいる人。いやなんでそんなすばやいのですかと、今ホットな話題の本をいつもすでに読み終わっているのですかと、聞きたい。

ストーリーが面白い部門の本ならわかる。ストーリーを追わせることが狙いなのだから。しかし純文学の本を素早く読めるのは個人的にはちょっとよくわからない。読書好きな人と会話をすると必ず「好きな作家」の話題になるが、私の場合は全ての著作を読めているような「好きな作家」は一人もいない。

私が挙げた「好きな作家」の本を、好きではなくとも私より数多く読んでいる読書好きはもちろんたくさんいる。この人が好きなんだ、これは読んだ?じゃあこっちは?初期の作品は?みたいに矢継ぎ早に聞かれても、私が読み切っているのはたったの三冊とかがざらにあって、そういうときにすごく困ってしまう。読んでいる数は少ないが好きなことに変わりはなくて、でも全てを読もうという努力はしていなくて、でも好きなんですという。

特に文章が美しい方の本は一冊読むだけでも何往復もしているために好きかどうかがきっぱりと分かり、一冊読めばもう好き作家認定ができてしまう。なのに、一冊読むのに時間がかかりすぎるために読んだ作品数は年に一、二冊程の遅々とした増え方になってしまう。その間にストーリーが面白い本を読みたくなる時もあるし、別の好き作家を読みたくなるときもあるし、なんなら過去に読んだ本を再読したいときもある。(しかもこちとら読書だけが趣味なわけではなく、年中忙しいオタクというライフワークもやっている。)

読んできた冊数は確かに大切なんだけども、しかしそれだけでは決してなくて、それも頭では理解はしているんだけど、「たくさんの本を読んでいる人こそが読書好き」みたいなやつからなかなか抜けられない。

思えば小学生の頃からずっとそうで、「年間で読んだ本の冊数」で贈られる彰があったのだけど、何ヶ月もかけてモモを読んでいた私は表彰されたことはなかったし、登壇するのはだいたい怪傑ゾロリや絵本をめちゃくちゃ読んでいた子なのだった。

 

いや、話が逸れたけども元々は本を読むのが速い人に難癖つけたいわけではなく(表彰の部分は難癖です)、読むのが速いのはそれはなんて素敵なことだろうと思う。積読を積みすぎなうえに読みたい本はマジでごまんとある、このままでは一生かけても読み切れる気がしてこない。私とてはやく読めるのであれば読みたい。次々続々と軽快に積読を片付けていきたい。でも行きつ戻りつする読み方をやめられないし、それが楽しくてやってるのだからどうにもままならない。本を読むのは大好きで楽しいのに、私の楽しい読み方はどうにものんびりすぎて、どんどんと読みたい新しい本が出てきてしまうので焦る。さらに困るのは、好きな作家は増えるということ。お、追いきれねえ〜!

 

どうしようもないことなのだけど、これは悩みに該当するのかな、嬉しい悩みかな、誰にも話すことができないので書いて発散したかった。あと冊数は読めてないけど本当に好きな作家は好きだし本を読むのも好きだよと、私は言いたい。限られた人生で読みたい本をどれだけ読めるのかなと考えていつも悲しくなってしまう。

こういうとき、つばきファクトリーの「意識高い乙女のジレンマ」がぴったりなんですわ。一人は映画へ一人は図書館へ。一度は溺れたい一度は飛びたちたい。やっぱり大切なことはハロプロが教えてくれるんだ。

 

終わり